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​平成27年度

〇 キメラ胚について

 動物性集合胚の14日間までの取り扱い制限の緩和 

現在、動物性集合胚を使った研究は、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」に基づく「特定杯の取り扱いに関する指針」に従って実施する事が義務づけられている。そのため、iPS細胞の分化能の検証は、集合胚作成から14日以内まであるいは、原始線条出現までしか観察できないこととなっている。しかし、この日数では分化能の確認には十分とは言えず、例えば、ブタの脳に何%ヒトの細胞が入っていくか等の検証を行う事ができない。また、14日以内という制限は、ヒト胚に関するウォーノック報告(1984 The Warnock Report on Human Fertilization and Embryology)に依拠しており、基本的に動物胚とみなせるようなヒト-動物キメラ胚については当てはまらない。それゆえ、個体としての発生を追跡できる最低限の日数を数ヶ月単位にまで緩和するべきである。 

 

サル-ブタでの基礎研究の推進 

外来の細胞がどの程度ブタの体内に入っていくか、どの部位に定着するか、動物だと言える基準は何か、人間であるとはどこまでか、等を見極めるにはヒトの近縁を用いたモデルによる十分な検証が必要である。そのためには、サルを用いた基礎的な研究の推進が求められる。サル-ブタの集合胚で、サルの細胞のブタ脳への寄与が低いとなれば、上記のヒト-ブタでの議論の進展が期待できる。 

サル-ブタの検証を積み重ねようにも、そもそも、サルのiPS研究者人口が十分ではない。この背景には、サルの研究のコストが高く、一方で、直接医療や応用研究に繋がる分野以外では研究費を獲得するのが困難な現状がある。サル-ブタの動物性集合胚の研究を推進するには、この分野の研究の価値を見直し、長期的視点に立った戦略的な資金配分が必要である。 

熊本大学生命倫理研究会からの提言

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